電子情報技術産業協会(JEITA)は今年10月のパソコン出荷台数が、前年同月比50%増の61万7千台、出荷額は53.3%増の753億円だったと発表しました。台数・金額ともに4か月連続のプラスとなりました。その理由としては、新型コロナ禍による在宅勤務向けパソコンの買い替え需要にあると見られています。
あれから4年半、パソコンによっては買い替え時が到来しているようです。パソコンの買い替えが家電製品と異なるのは、故障によって買い替えるよりも反応が遅くなって買い替えられるという行動の違いです。機器は正常に動くけれども速度が使用に耐えられなくなった、この状態を機能的寿命と言います。それでは機能的寿命は何によって決まるのでしょうか?
新品のパソコンは低価格品から高価格品まで大きく開きがありますが、操作性の違いはほとんど感じられません。ところが年月が経つと速度に違いが生じ、4年経つと低価格のパソコンは苦痛なほどに遅くなりますが、高価格なパソコンはさほど変化が感じられません。これはパソコンやスマホなどのプログラム動作機器特有の現象です。
パソコンやスマホを動作させるプログラムは、セキュリティ対策や不具合対応のために、頻繁に更新されます。一般にこれは無料で行われるのでユーザーはあまり意識しませんが、1年も経てば機器内のプログラムは大幅に改変されているのです。そして更新のたびにプログラムサイズが大きくなるので、機器の演算装置(CPU)に対する負荷が増大していきます。これが年月とともに動作が遅くなる原因です。高性能のパソコンは能力に余力があるので年月が経っても遅くなりませんが、廉価版のパソコンは能力に余力がないので年月とともに急速に遅くなります。
やや乱暴な筆者の見解ですが、パソコンの価格と機能的寿命は正比例の関係にあります。10万円のパソコンが4年で機能的寿命を迎える場合は、20万円のパソコンは8年で機能的寿命を迎えるというものです。言い換えればパソコンは10万円でも20万円でも8年間の維持コストは同一ということです。しかしここで注意してもらいたいのは更新コストです。10万円のパソコンを4年で更新する際、データの移行に作業コストが生じるため8年間のトータルコストは高くなります。コストだけでなくパソコンを更新すると、慣れるまでの見えないコストも生じます。
つまりパソコンは予算が許されるなら、少し上位の製品を選んだ方が、長い目で見た維持コストは有利になるのです。これからパソコンの買い替えを検討される方の参考になれば幸いです。