パソコンソフト市場で25年以上にわたり世界の頂点に君臨してきたマイクロソフトが、8月に時価総額でアップルに逆転されたこともあってか、最近変わってきているようです。9月28日、29日の両日に、企業のIT担当者や代理店担当者5,000名余り集めて、東京品川の「グランドプリンス新高輪」で開催された「マイクロソフトカンファレンス2011」では、これまでになくユーザーに近寄ろうとする姿勢が感じられました。 巨大スクリーンをバックに真っ暗な大空間で、スポットライトを浴びて登場したマイクロソフト社長の樋口泰行氏は、スティーブジョブズばりの演出でキーノートスピーチ（基調講演）を始めました。「日本の企業は今、大変身しなければならない時代に突入した」として、三つのキーワードを挙げました。①：戦略は世界目線、②：経営マインドは戦闘意欲、③：経営オペレーションは近代化。この大変身ができない企業はこれからの社会で淘汰されるかもしれない、とのご宣託です。

AppleのiPhoneやiPadなど新デバイスの登場や、データをネット上で預かるクラウドサービスの進展、このようなIT業界の構造変化はマイクロソフトがこれまで得意としてきたパソコン中心のビジネスモデルを変えようとしています。同社は新しい潮流に対応したビジネスモデルを模索しているようで、会場では同社初の携帯電話「Microsoft Phone」、一般ユーザー向けクラウドサービスの「Office365」、大企業向けクラウドシステムの「Hyper V クラウド」を、景品付きの実機体験サービスで観客にアピールしていました。 今年参加して感じたのは、サービス意識の徹底による同社自身の大変身です。午後の分科会では会場入口に講師やスタッフがずらっと並んで笑顔の挨拶、分科会終了後は再び全員が出口に並んで参加者一人一人にお礼の挨拶。あたかも結婚披露宴に来たような雰囲気で、ここまで丁寧な分科会に参加した経験はこれまでありません。また販売代理店には専用ラウンジを設けてコーヒーや菓子の接待、ホテルの昼食券配布、会場全体に届く公衆無線LANの設備と、至れり尽くせり。極めつけは今年2月に品川に移転した同社の本社見学ツアーです。10名ほどの参加者にそれを上回る数の社員が付き添い、普段非公開となっている同社の内部を案内し、見学会後の懇親会では社員一人一人が参加者に応対しました。 IT業界の盟主であるマイクロソフトが、顧客イメージの改善に徹する姿は、やがて来るべきITビジネスのパラダイムシフトを予感させられるものでした。
（マイクロソフトカンファレンス2011：http://www.microsoft.com/japan/events/msc/2011/）

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